「 ア ベ コ ベ 」



「好きだよ。」


表情一つ変えずにただその言葉だけを発し、唇を奪われた。
その行動の意味するところがわからなく、僕はただただ目を丸くし突っ立ってる事しか出来ない。
相手の目を見やるとポッターは口の端だけ何時ものように意地悪く笑んだ。
段々と脳に血が巡り、あいつのした行為がわかった途端、顔が火照ったように赤くなる。


「貴様何を、」


許せなくて許せなくて仕方がなかったのに、
出た言葉は意味を持たず、声も情けなさを帯びている。
唇がじわりと熱をもつ。
意識は杖を上げようとしているのに、身体がまるで金縛りにあったように動かなかった。



「ねぇ、」


ポッターがスネイプへと近寄る。



口が動いて







「おい、スネイプ。どうした?早く行くぞ」

 
とっくに授業が終わっているのにもかかわらず、
席を離れようとしないスネイプに痺れを切らしたのか、
友人がスネイプの腕を掴みながら教室を出るように促した。


「あぁ、なんでもない。行こう・・・」


そう返答したのにも関わらず、セブルスはまた黙り込んでしまう。
あの時からポッターが言ったことが頭から離れなくて、
そして、その言葉に恐怖を感じていた。




ポッターの口が動いて


『---お前が僕のこと好きだってほんと?』


セブルスが、驚きポッターのほうを向けば、
先ほどとは違う顔。
笑ってもいなく、セブルスに好きって言った顔でもなくて、
なんであろう?
人間が汚物を見るときの顔によく似てた。
そして、セブルスはその瞬間全てを諭した。
あぁ、騙されたんだと。
ジェームスは、いつもと同じ。
性質の悪い、最大の嫌がらせをセブルスに仕掛けたんだと。


『僕からのキスどうだった?』


ジェームズからの言葉はもう聞きたくなかった。


『顔真っ赤にしちゃって。』


やめろ


『男からのキスなのに、』


お願いだから


『気持ち悪くなかったの?』


やめて、もうそれ以上何も


『僕は、』



言うな



『気持ち、』









『悪かったよ。』


頭から何かが割れる音がする。
何も考えられない。
ただ、この男が自分にキスしたのは単なる好奇心だという事を
自分に対する嫌がらせだということを
必死で
脳からその事実を拒絶しようと
その場に蹲り頭を抱くように押さえていた。
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