「 E R I C A 」
カツンカツンと無駄にただっぴろく長い廊下に響く。
カツンカツンと静かな床の上から靴の音が空気に振動して耳に届いた。
その音の主セブルス・スネイプは顔を思いっきし顰めながら
廊下をやや早歩きで渡っていく。
胸の高さに置いている片方の手から、赤い血がツーっと流れて床に落ちるのを
片目で見つつ更に顔を顰めもう片方の手で血が流れている手首をぎゅっともう一度握る。
それでも、流れをやめぬ液体に一つ溜息をつきながらある部屋を目指し、ひたすら歩く。
彼が歩いた道には赤い斑点がぽつぽつと床についているが、
この際そんな事は気にしない。
それよりも、先ほどから朦朧としかけている頭のほうが重大だ。
こんなところで、セブルス・スネイプがあろうことか自分の失態で
廊下に倒れるなんて事になれば・・・
想像するだけでもおぞましかった。
スネイプはその考えを振り払うかのように更に足のスピードを上げる。
やっとのことで、その部屋の前に着きほんの少し安堵をつきながらも
ガラっと扉を空けた瞬間その考えは一瞬にして消された。
気づいた時は中に居た者の片腕を強く掴んでいた。