「 ア ベ コ ベ 」
「――――スネイプってポッターのことが好きなんじゃね?」
日常の一コマの出来事。
何をするわけでもなく、
ただ、仲間達と廊下を闊歩している時に聞こえてきたその言葉。
後ろを振り向いてももう誰がその話をしたのかわからなく、
ただ、その時はそんな噂が流れている、という事実だけが頭に残った。
何を思うわけでもなく、その事に特別嫌だという気持ちがあるわけでもなく、
ただ、ジェームズは無関心だった。
その噂を聞いたせいなのか、時折セブルスの視線を感じた。
それは、どこでというわけではなくて、
気付いたらこちらを見ている。
自意識過剰な面もあるかもしれないが、
ふとした時によくセブルスが傍に居た。
あの噂は本当なのだろうか、
その時初めて噂とセブルス・スネイプに興味を抱いた。
「スネイプっていっつも僕らの傍にいない?」
ちらりといる方を目配りしながら仲間に言う。
すると、自然皆の視線もそちらに行き
セブルスが勢い良く視線をこちらから移したのが見えた。
「あぁ、」
眉間に皺を寄せながら苦々しくシリウスはそう言う。
「僕らに悪戯されてるから仕返しの機会を窺ってるとか?」
うすら笑いを浮かべて言うリーマスがまるでセブルスの事を見下しているように見えた。
「ま、返り討ちにしてやるけどな。」
その言葉に皆で笑って、その話はお開きになった。
前言撤回。
リーマスだけじゃなく、仲間達は全員セブルスの事を見下しているようだ。
でも、それで僕が正義感ぶってセブルスを庇うことなんてしない。
何より僕自身がアイツの事を見下しているからだ。
そして視線を感じ始めてから、
1ヶ月。
僕にしては持てた方だと思う。
僕は単独でセブルスに悪戯をする事を決めた。
これをすればアイツは僕にもう視線を向けることはなくなるだろう。
そう思うと、少し寂しい気もするが、
セブルスがした時の顔を想像すると堪らなく楽しかった。
アイツはどんな顔をするだろう?
怒るかな?
泣くかな?
冗談って言って笑うかな?
「おい、ジェームズなんて顔してんだよ」
気持ち悪い、とシリウスの顔が告げていた。
でも仕方が無い。
今からすると思うと、
今までしたどの悪戯よりもわくわくするのだから。